明治神宮野球大会 決勝 対立命大 11月19日 於・明治神宮野球場
◆結果◆
青学大 000 003 100|4
立命大 000 000 000|0
◆出場選手◆
1 二 藤原夏暉 大阪桐蔭
2 左 大神浩郎 福岡大大濠
3 三 小田康一郎 中京
4 捕 渡部海 智辯和歌山
5 中 中田達也 星稜
6 一 初谷健心 関東第一
7 遊 山口翔梧 龍谷大平安
8 右 谷口勇人 大阪桐蔭
9 投 中西聖輝 智辯和歌山
決勝のマウンドには中西聖輝(コ4=智辯和歌山)が上がった。3日前に完投勝利を挙げた勢いそのままに、7回二死まで安打を許さない快投。打線6回に主将・藤原夏(法4=大阪桐蔭)の安打を起点にチャンスを作ると、渡部海(コ3=智辯和歌山)が先制の左越3ラン本塁打を放つ。続く7回には谷口勇人(営3=大阪桐蔭)適時打でリードを4点に広げた。援護を受けた中西はその後も圧巻の投球で9回17奪三振無失点の完封勝利を挙げた。青学大は4-0で快勝し、明治神宮大会2連覇、そして日本一奪還を達成した。
先発のマウンドを託されたのは中西。9回11奪三振1失点の快投をみせた佛教大戦から中2日での登板となった。安藤寧則監督も「自信を持って送り出した」と、中西はその疲れも感じさせず、初回からエンジン全開。立命大による、中西の母校・智辯和歌山高校の“魔曲”と呼ばれるジョックロックの演奏を背に、三者連続三振に打ち取る上々の立ち上がりをみせた。

先発の中西
2回表、中田達也(社4=星稜)が三遊間への打球を自身の快足を武器にヒットにし、打線を勢いづける。その後盗塁を成功させ、二死二塁とするも、相手の好守にも阻まれこの回には得点とはならず。それでも中田が作った流れは、確実に中西のマウンドへと還元されていった。

出塁し喜ぶ中田
相手打線の分析も中西の好投を手繰り寄せていた。中西をリードする渡部は、「(立命大の)前の試合も見ていたら、真っすぐにアジャストしてくるチームだったので、いつも以上にフォークも使いましたし、決め球でカーブ使いましたし、いつもより変化球主体でまっすぐの割合を少なめでいきました」と冷静な分析から工夫した配球で中西を支えた。中西の武器である変化球に相手打線は沈黙。中西は一塁すら踏ませない投球で圧倒する。

圧倒的な強さをみせた中西・渡部のバッテリー
しかしそう簡単に勝機を渡さないのが秋季リーグ全勝でこの試合に挑んできた強豪・明大を下した立命大だ。青学大打線もなかなか出塁することができず、封じ込まれる展開が続いた。
4回裏に中西は死球を与え、ここでノーヒットのチャンスは逃す。しかし四隅に散る変化球にその後の打者も攻略できない。「集中して投げることができた」と試合後振り返るように、テンポよくして打線を捌き、高校時代のチームメイト・角井との勝負でも圧巻の投球で見逃し三振を奪った。
試合が動いたのは6回。4回にはセンターに抜けるかと思われた打球を華麗なジャンピングスローでアウトにする好守備をみせた先頭打者の藤原がヒットを放ち、喜びを露わにする。続く大神浩郎(総1=福大大濠)は自身の持ち味である快足を飛ばし、バントヒットを決める。小田も送りバントを決め、一死二三塁として打席に立つのは今大会攻守にわたって活躍をみせる4番・渡部。「男らしくいけ、勝負してこい」という安藤監督からの熱い言葉を胸に打席に入った渡部は「(中西が)いいピッチング本当にしてくれてたので、なんとかまず1点取ろう」と中西への思いをのせて弾き返した大きなあたりはレフトスタンドに飛び込む3ランホームランを放った。主砲の勝利を決定づける一振りにベンチは大盛り上がりをみせた。安藤監督も「本当に最高の結果、本当にすごい」と渡部を称えた。

ヒットを放った藤原

1年生ながら大舞台でも大活躍の大神

先制本塁打を放った渡部

笑顔でダイヤモンドを回った
7回には山口翔梧(営2=龍谷大平安)が四球で出塁すると、谷口が立命大の好投手・有馬の高めのストレートをうまく捉えるタイムリーヒットを放った。山口は4点目のホームインを決めた。

貴重なタイムリーを放った谷口

本塁に生還する山口
安定感のある投球で、テンポよくアウトを重ねていく。立命大の迫力のある応援にも決して負けず、アウトカウントを重ねる。

三振を奪い笑顔でベンチに戻る中西
9回裏のマウンドに立ったのも中西。「負けたくない、勝ちたいという気持ちが何倍にも強くなった」と、青学大野球部としての強い使命を胸に投げる中西の球に誰も手を出すことができない。高校時代から約5年女房役を務めてきた渡部は中西の投球を振り返り、「本当に今まで1番と言っていいぐらいのピッチングだった」と語る。4年間の中西を振り返り、指揮官は「最初は本当に我が強いというか、ガキというか。最上級生になって変わったのは、本当のエースになるには、立ち居振る舞いも大事なんだって。最後の最後、本当の意味で変わってくれたかな」その言葉通り中西は最後も三者連続三振で打ち取ると、マウンドで大きなガッツポーズをみせた。渡部と抱き合い、選手らはマウンドに集まり、互いを称え合った。青学大は史上6校目の大会連覇を果たし、大学「三冠」を達成した。

抱き合う中西と渡部

マウンドに集まる青学大ナイン
優勝の要因を問われた安藤監督は、「ごまかさない」という言葉を真っ先に挙げた。この1年、青学大は自分にも仲間にも決して嘘をつかないチームだった。時にはぶつかり合い、悩み、涙することもあった。それでも誰ひとり隠れることなく、全員で成長し続けてきた。藤原主将も、チームの前に立つ難しさ、全日本選手権で負けた悔しさに悩み続けたという。しかし副将の初谷健心(総4=関東第一)らと何度も話し合い、4年生を中心に“強く、正直なチーム”を築き上げてきた。今日の優勝は、その積み重ねの結晶だ。ぶつかって、悩んで、たどり着いた最高の景色。青学大野球部、そして大学野球界に“藤原世代”の名は深く刻まれる。

胴上げをされる藤原
(記事=比留間詩桜、写真=田原夏野・比留間詩桜・高木一郎・野見山碧・綿引文音)



コメント