史上5校目の大学四冠を成し遂げた青学大。その中心にいた4年生は、優勝に輝いた明治神宮野球大会をもって硬式野球部を引退しました。青山スポーツでは4年生9名にインタビューを行い、青学大硬式野球部で過ごした4年間を振り返っていただきました。最上級生としてチームを牽引してきた4年生の皆さんの熱い言葉を全9回に渡ってお届けします。第5回の主人公は1年間裏からチームを支えてきた清水隆太郎(コ4=都立城東)学生コーチです。
清水は青学大で過ごした4年間を「辛かったけど、頑張って練習して続けてきて、最後学生コーチとして日本一で終われたっていうのは。辛かったからこそ達成感がすごかったというか、があったので。結局充実したし楽しかったので、青学来て良かったなとは思います。」と振り返った。清水は他の選手とは違ったルートを通って青学大野球部への入部を決めた。というのも、一般入試を受けて合格し、晴れて野球部の一員となったのだ。スタート地点が他の選手とは違うが、同じように練習に取り組み、公式戦での試合出場も果たした。
ラストイヤーについては「個人的には学生コーチになって。選手続けたかったですけど学生コーチになって。大会全部優勝できましたし、自分の力がどれぐらい貢献できてたかっていうのはわかんないですけど。少なからずチームには、チームを支えたい、引っ張りたいっていう気持ちがあったので、学生コーチやってよかったなって思いますし。他の人じゃできない経験ができたので、ラスト1年が1番楽しかったですね。」と振り返った。大学3年生のシーズンまでは選手として試合に出場していた清水。最後には四冠を達成し有終の美を飾ることができたが、最初に学生コーチを頼まれた際には葛藤もあったという。「3年生のときはベンチに入ってて。最後の神宮大会は入れてなかったですけど。一個上が抜けて次自分たちの代ってなって、自分たちの代でレギュラー取りたいって気持ち、スタメンになりたいっていう気持ちがあったので。監督に学生コーチやってくれないかって言われたときは悔しかったですけど、誰にでもできることじゃないと思うんで、学生コーチは。悔しい半面、自分にしかできないことがあるんだなっていう思いで。複雑な気持ちで最初はいたんですけど、やり始めて選手にはないやりがいあるなって感じたんで。選手じゃ経験できないこと。最初は若干複雑だったっすけど、やってくうちにどんどんもう気持ちも切り替えて。楽しくというか、充実した1年だったかなと思います。」学生コーチは、選手とはやることが大きく異なる。試合前のシートノックのノッカーや三塁コーチャー、選手の練習時のバッティングピッチャーなど、裏方の仕事が多い。レギュラー奪取を目標に迎えたラストイヤーに学生コーチに転向を決めるのは簡単なことではなかったはずだ。清水は学生コーチになることを決めて大学ラストシーズンを駆け抜け、影でチームを支えた。
学生コーチになったということは、選手人生にピリオドを打つことを意味している。そのため清水はリーグ戦と並行して就職活動も行っていた。「リーグ戦の日とか試合前に面接して、試合行って。でまた試合終わったら面接みたいなのもあって。」「めちゃくちゃキツかったんですけど、それは学生の頃しかできない動きなんで。大変だったですけど、野球やってなかったら就活も絶対多分上手くいってなかったですし。結果的に良い形で終われたので、就活も。どっちも100%でやれて今は満足っていう気持ちですね。」野球も就職活動も全力投球で取り組み、どちらも良い形で終えることができた。
学生コーチとして何を大事にしていたのか。清水は全員とコミュニケーションを取ることを重視していた。「僕は立場的に選手でも指導者でもないんで。間にいるからこそどっちの視点もあると思うので。繋げるではないですけど、間にいるんで。コミュニケーション大事だなっていうふうに思ってたんで。」「別に野球のことじゃなくても、普通に寮のときでもたくさん喋りかけて。学生コーチがすごい怖いみたいなのってあんま意味ないと思っていて、いつでも練習ちょっと付き合ってくださいって1年生からでも言って貰えるような学生コーチになりたいって思ってたんで。」学年に関係なくフラットな関係をグラウンド外からも築いていくことで、下級生もやりやすい環境を作ることを意識した。 結果、1年生からもバッティングピッチャーやノックを打つことをお願いされることがあったそう。清水が理想とした学生コーチの姿になれたと言えるのではないだろうか。
印象に残った試合を問われると、個人としては昨秋の開幕カードである対中央大3回戦を、チームとしては今年行われた明治神宮野球大会決勝の対創価大戦を挙げた。中央大戦は初戦、2回戦はベンチから外れたが、3回戦にベンチ入り。8回に代走として公式戦初出場を果たした。このイニングには得点を挙げることは叶わなかったが、9回には清水の好走塁も光り青学大は逆転勝利を収めた。「ランナー一塁だったんですけど、そっからワンヒットでホームまで帰ってきて。ヘッドスライディングして自分がホーム踏んだっていうのは。1点取ったっていうのはすごい覚えてるし、今までキツかったこととか全部思い出した瞬間だったかなという感じですね。」清水は選手時代、本番に弱かったそう。「選手の頃、練習とか紅白戦とかでは結構良い結果残せてても、それが実戦の対外試合、練習試合とか実際の公式戦とかになると全然練習のときできてた動きができなくなっちゃってて。それはほんとキツかったですね。」そのような過去を乗り越え、自身の活躍もあって勝ち点を獲得したこの試合。清水にとってとても印象深い試合となった。
創価大戦は大学四冠を決めた重要な一戦。「多分一生忘れないかなっていう感じですね。ほんとに自分ら坊主にしたりとかすぐ怒られて、やっぱりこの学年か、みたいなの言われてたんですよ。1年生のときから問題学年みたいなん言われてて。その自分たちが青学史上初っていうところを達成できたっていうのは。達成感とか、ほんとに自分たちがやったんかっていう思いもありましたし。今までの思い出が全部出てきて、正直涙が出たというか。初めて嬉し泣きした試合なんで、野球やってきて。」昨年は惜しくも成し遂げられなかった大学四冠。その悔しさを知る今年の4年生が最上級生としてチームを引っ張って掴んだ栄冠。その嬉しさはひとしおだろう。
そんなチームの雰囲気はどうだったのか。「下の学年がすごいやりやすかったんじゃないかなって思いますね。上がすっごい厳しいとかそういうのもなく、僕らも下に頼むっていうかそ下の力が絶対必要だったので、勝つ上では。1年生 2年生 3年生の力が絶対必要だったので。僕らが引っ張るっていう気持ちもありましたけど、下からの底上げってところもお願いしてたんで、全体的にすっごい良い雰囲気だったかなと思いますね。1年生 2年生がやりやすい雰囲気だったとは思います。」今季も多くの下級生の活躍が目立った青学大。その中から、来季のキーマンとなる選手に清水は藤原夏暉(法3=大阪桐蔭)の名前を挙げた。「キャプテンですごいチーム変わると思うんで、そのチームを引っ張るキャプテンっていうところで、注目したいなとは思います。」「言うべきことは言ったりできるので。(今年は)役職はついてなかったですけど、内野手を自分が引っ張ってくっていう感じはあったんで。」と話してくれたように、藤原がキャプテンとしてどのように新しいチームを率いていくかに注目だ。
そして、チームの雰囲気の良さ、仲の良さはドラフト会議の際にも垣間見えた。1巡目の指名終了後、指名を受けた選手や下級生の選手は会見場に移動。しかし、4年生の選手は会見場には移動せず、指名を待つ児玉悠紀(コ4=日大三)の隣の席に移動し、ドラフト会議の様子をともに見守った。「(児玉が)最後呼ばれるか呼ばれないか、別に呼ばれなかったとしても最後まで横で見てあげたかったし、それが児玉にとっても嬉しいっていうか、そっちの方が。もし自分だったらいいなあっていうふうに思ったんで。それは多分みんな同じ気持ちだったんで。誰も後ろには行こうとせず、児玉の近くで見てましたね。それは。自然と横に行ったって感じですね。」4年生の選手たちは支配下指名の最後まで一緒にドラフト会議の様子を見守っていた。4年間をともに過ごした仲間の絆が感じられた瞬間だった。
後輩たちには「自分たちの色を出しつつ、僕らの良かったところは吸収して、さらに良いチーム作って。今回四冠できたんですけど、来年はもっと圧倒的な力で四冠して欲しいなとは。プレッシャーはかけないですけど、期待はしてますね。」とエールを送った。四冠の喜びを知る選手が数多く残る青学大。来季の戦いぶりにも注目だ。
清水にとって青学大野球部とは。「厳しい環境、レベル的にもすごい高いですし、それでずっと出れないっていう経験もして。それでやっと掴んで出れたっていう経験もして。で最後は学生コーチでチームをマネージメントしたというか、あのチームを支えたという立場に立って。色んな経験をした中で、色々考えながらやってたんで、すごい考える力がついて。色んな視点で物事を見れるようになったりとかして、すごい人間的にも成長できた環境なのは間違いないので。青学野球部とは、成長させてくれた場所ですかね。」選手としても、学生コーチとしてもチームに関わった経験があるからこその成長があった。青学大野球部で培った経験を胸に、清水は新たな道を歩んでいく。
(記事=田原夏野、写真=遠藤匠真、比留間詩桜、田原夏野)
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