【硬式野球】優勝記念!監督コーチ特別インタビュー ~安藤寧則監督 後編~

硬式野球

今年圧倒的な強さを見せ17年ぶりの東都大学野球リーグ制覇、そして18年ぶりの全日本大学野球選手権制覇を成し遂げた青学大硬式野球部。その野球部を率いたのが2019年から監督に就任した安藤寧則監督だ。今回は前編と後編の2回に分けて安藤監督に迫る。後編では安藤監督と選手・コーチとの関係や想いについてお伝えする。
(前編はこちら https://aoyamasports.conohawing.com/?p=4373


 

今季のチーム体制は主将に中島大輔(総4・龍谷大平安)、副主将に中野波来(法4・大阪桐蔭)を据えた。この2人のタイプは対照的である。中島は今季主将に就任するまでキャプテンなどの経験がなく、どちらかといえば試合中も静かなタイプであった。逆に中野は経験が豊富だ。高校時代は名門・大阪桐蔭高校で現中日ドラゴンズの根尾昂などを擁した最強世代の次の代の主将を務めた。最強世代の次の代というとてつもないプレッシャーの中主将を務めあげた経験がある。また明るい性格の持ち主で、試合中も積極的に声を出すタイプだ。

今季主将を務める中島(左)と副主将を務める中野

 

そんな中で安藤監督が主将に指名したのは中島。春季リーグを終えた安藤監督は「ポジションは人を変えるんだなあと思いました。」と語った。中島は主将に就任してからパフォーマーとしての見え方や見せ方が変わったと話す。1番打者を務めた今季は初回先頭で出塁をし、塁上でガッツポーズをしてチームを勢いづけることが多かった。さらにベンチにいる時でも常に大きな声を出し続けた。「キャプテンにしてよかった」と安藤監督はしみじみと話した。さらに中島は先日行われた第44回日米大学野球選手権においても、日本代表の主将を務めた。そして2007年以来となるアメリカ開催での優勝を勝ち取った。主将経験がなかった主将が青学大を、そして侍ジャパンを優勝に導いたのだ。

 

副主将に就任した中野は前述の通り経験豊富で性格もキャプテンタイプの選手である。そんな中野を「本当に大きい存在であり漢」と評する。最強世代の次の代の主将を任され毎日プレッシャーと戦った。だが甲子園出場は叶わず、開会式に1人で出席し優勝旗を返還するという経験をした。その経験を買って安藤監督は大阪桐蔭高校に中野指名のスカウトを申し出た。そんな中野を副主将に指名したことには安藤監督の想いがあった。「これまでチームのことを十分にしてくれたから、最後の1年は自分のことにたくさん時間を割いてほしい」という願いだった。中島と中野を同席させて主将と副主将について伝えた席でそのことを伝えた際、中野は悩むことなく即答で副主将就任を受け入れた。さらに大阪桐蔭時代にナンバー2の大切さを十分に理解しており、自分が思う中島にとっての理想のナンバー2を全うするという強い意志も安藤監督は聞くことができた。そんな2人がチームを引っ張ったからこそ、良い雰囲気の試合を続けることができたのかもしれない。

 

チームを作り上げてきたのは監督と選手だけではない。コーチとトレーナーがチームを支えている。リーグ戦中ベンチに入っているのは主に投手の指導を担当する中野真博コーチである。中野コーチも青学大OBであり、安藤監督より1歳年上である。安藤監督は中野コーチの存在が大きすぎると話す。中野コーチは青学大を卒業後、東芝の野球部で選手として10年活躍。選手を引退後は9年間コーチを務め、その後1年間東芝で勤務した後に安藤監督の依頼もあり青学大のコーチに就任した。中野コーチは自分を「教育なんて向いていない」と話すそうだが、安藤監督はそれを否定する。投手と野手関係なく自然と話す姿を見ると、これが教育者であると感じることがあるそうだ。さらに選手へのアプローチの部分では安藤監督自身も学ぶことがたくさんあると話す。これは東芝という名門チームでコーチを務めた経験と、1年間ではあるが企業に勤めた経験が活きているようだ。さらに毎週日曜日には安藤監督の同級生で、青学大の主将を務めた経験がある四ノ宮洋介コーチも指導に来る。そんな2人が安藤監督を支えているのだ。

試合中の安藤監督と中野コーチ

 

さらに昨年からトレーナーに就任した渡辺利信トレーナーにも安藤監督は絶大な信頼を置いている。トレーニングは鍛え上げられた選手でも常に苦しいものだ。選手が嫌だと思うことでもやらせなければいけないことがトレーナーの仕事である。渡辺トレーナーは嫌なことでも、どうしてやるのかといったことなどを論理的に選手に伝える。さらに指導を通してトレーニングにおいても選手の自主性を育む指導方針だ。そんな渡辺トレーナーの指導の結果が出たのが春季リーグである。毎年リーグ戦の後半で失速し、優勝を逃すことが続いていた青学大だが今シーズンは失速するどころか、後半に調子を上げてきた選手までいた。選手が渡辺トレーナーと共に作り上げてきたものが発揮されたリーグだった。

 

選手のことを「後輩たち」と呼ぶ安藤監督は「いい関係に見えるのは、選手側が気を遣ってくれているから」と笑って話すが、監督の熱意に惹かれて入部してくる選手が多いなど、選手からの信頼が厚い。そんな安藤監督は秋季リーグに向けてもっといいものを作ると話す。リーグ優勝、そして日本一を達成した今季を通じて積み重ねたことをさらに深掘りしていく。この考え方は選手全員が理解しており、すでに練習で実践されている。チーム全体でできることをやり、観客をワクワクさせるようなチームを作ると語った。秋季リーグで優勝、そして明治神宮大会で優勝すると四冠達成となるが、安藤監督はそのことは意識していない。優勝はご褒美であり、地に足をつけて戦う。それが戦国東都を戦う青学大のモットーだ。

 

青学大に通う学生には「もっと試合を見に来て欲しい」と語った。「同じ大学に通う学生が必死に頑張っている姿をぜひグラウンドレベルで見てあげて欲しい」と思いを語った。春季リーグの活躍で、筆者の周りでも硬式野球部の話題が挙がることが増えたが、それでもまだ神宮球場のスタンドは寂しい。「うちの選手はみんな顔いいでしょ?」と違った目線での楽しみ方も話した安藤監督。青学大生は無料で観戦できるため、ぜひ球場に足を運んでほしい。

 

四冠への挑戦が始まる青学大硬式野球部に注目だ。

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