史上5校目の大学四冠を成し遂げた青学大。その中心にいた4年生は、優勝に輝いた明治神宮野球大会をもって硬式野球部を引退しました。青山スポーツでは4年生8名にインタビューを行い、青学大硬式野球部で過ごした4年間を振り返っていただきました。最上級生としてチームを牽引してきた4年生の皆さんの熱い言葉を全8回に渡ってお届けします。第3回の主人公は高い走力が魅力の山本英錬(国経4=今治西)選手です。
山本は青学大で過ごした4年間を、選手として、そして人としても成長できた4年間だったと振り返った。「色んな凄い奴らが集まって、色んなプライド持った奴らばっかりなんですよ。色んな考え方とかあったりして。色んな生き方してきた奴らと一緒に4年間暮らしてきたんで。色んな捉え方とか生き方とか考え方っていうのは自分の中で身についたかな。」様々な個性を持った選手たちと過ごした4年間。その最後に大学四冠を達成した喜びは格別だろう。
2024年の秋季リーグ戦は試合への出場機会が多くはなかったため、サポート側に回って試合に出場している選手をどのようにして気持ち良く送り出すことができるかを考えていたという山本。1つ上の先輩たちの背中を見て学んだことがここで活きた。「去年の三冠した先輩たちの、手塚悠(24年社卒・現パナソニック)さんとか中野波来(24年法卒・現Honda鈴鹿)さんとか、そういう方たちの行動とかそういうことを見て学べた結果、自分もそれを活かして後輩たちを気持ち良く送り出すことができたのかなというふうに。上の先輩見たお陰かなって思います。」今年のチームにとって、昨年の4年生はとても大きな存在だったようだ。
山本は重要な場面で代走や代打として試合に出場することが多くあった。途中出場の難しさについて、「いつ来るかわからないんで。ずっと準備しとかなきゃいけない状態なんで。後から行く組の気持ちの作り方とか身体の作り方っていうのもまあまあ難しいなと思ってましたね、僕は。」と話した山本。展開によって試合に出場するタイミングは大きく異なる。明治神宮野球大会は例年寒い時期に行われる。普段のリーグ戦よりも身体が冷えやすい環境だが、リーグ戦と同様いつ呼ばれるかはわからない。呼ばれたらすぐに動けるようにイニング間に走ることもあるが、それもやりすぎると試合で100%を出すことができなくなってしまう。肉体的にも精神的にも常に万全の準備をしていなければいけないため、途中出場の選手にはスタメンの選手とはまた違った苦労があるのだ。
ワンプレーのミスが命取りになることもある。特に、東都大学野球ではリーグ戦で最下位になったチームには入れ替え戦が待ち構えており、1つのミスがチームの行く末を大きく左右する可能性がある。山本は大事な一戦でバントミスをした経験があり、ミスをきっかけに朝までバント練習をした経験があるという。「ミスしたらやっぱその分取り返さなきゃいけないんで、印象に残るのは印象に残ってます。」1つのミスプレーが大きなインパクトを残すことがあるようだ。
緊張感のある中で行われたリーグ戦。山本は印象に残った試合に3年秋の対東洋大2回戦を挙げた。勝ち点を落としたら優勝を逃すかもしれない重要な一戦は延長戦にもつれ込んだ。延長11回裏、二死満塁のチャンスで山本は打席に立った。山本の打席で相手投手が暴投し、三塁ランナーが生還。青学大はサヨナラ勝利を収めた。この打席について「あの勝つか負けるかの試合。緊張した場面で打席に立てたっていう緊張感っていうのは忘れられないですね。」と語ってくれた。相手投手の加藤慶大とは過去に一緒にプレーした経験がある山本。手に汗握る展開の試合で昔から知る投手との対戦が山本に強い印象を残した。
青学大の選手たちはグラウンドからでもベンチからでも、上級生・下級生に関係なく試合中に積極的に声掛けをしている。部として声掛けしよう、という方針がある訳ではなく、試合に入っていたら自然に声が出ている選手が多いのだそう。ここにも昨年の4年生の影響があったという。「ベンチスタートとかでも恥ずかしくない。ちょっと恥ずかしさとかあると思うんですけど。4年で試合に、スタメンで出てないとか。全然恥ずかしくなくて、やっぱそれも上の先輩見て、堂々としてた姿見てたからなのかなってのは思いますね。」と話してくれた山本。大学三冠を成し遂げた昨年のチームを引っ張っていた4年生がいたからこそ、今年の大学四冠があったのだろう。
佐々木泰(コ4=県岐阜商)主将を中心とした今年のチーム。去年と変わらず良い雰囲気だったという。「とにかく下級生に溜め込ませたくないみたいな。言いたいことは言えばいいし、上級生と下級生関係ないぞっていうのはずっと言い続けてきたんで。それがチームの色で、出てきたのかなと。」学年に関係なくなんでも話せる関係が築けていたことも、今年の青学大の強さの一因なのかもしれない。そんな野球部の後輩の中で来季のキーマンとなる選手は誰だと思うかを問われると、青山達史(コ1=智辯和歌山)の名前が挙がった。「上級生はもうやるのはわかってるから。そこを爆発させるっていう点で言ったら新1年生とか、2年生とかがキーマンになってくるのかなと僕は思いますね。」下級生選手の爆発に期待したい。
この学年で最後に大学四冠を達成できたことが4年間で一番嬉しかったという山本。山本たち4年生は学生野球にピリオドを打つが、1年生から3年生は来年以降も青学大のユニフォームに袖を通し、2年連続となる大学四冠を目指して戦っていく。後輩たちには「可能性の塊たちなんで、四冠っていうのに囚われすぎずに、自分たちの色を出して頑張って欲しいです。」とエールを送った。青学大硬式野球部の4年間で培った経験を胸に、山本英錬は新たな道へ進んでいく。
(記事=田原夏野、写真=遠藤匠真、田原夏野)
コメント