【硬式野球】扇の要が紡いだ4年間 〜4年生インタビュー② 佐藤尊将 〜

硬式野球

今年度史上5校目の大学四冠を成し遂げた青学大。その中心にいた4年生は、優勝に輝いた明治神宮野球大会をもって硬式野球部を引退しました。青山スポーツでは4年生8名にインタビューを行い、青学大硬式野球部で過ごした4年間を振り返っていただきました。最上級生としてチームを牽引してきた4年生の皆さんの熱い言葉を全8回に渡ってお届します。第2回の主人公はチームのムードメーカーの捕手・佐藤尊将(総4=智辯学園)選手です。


明治神宮大会では激闘を制し、見事優勝を果たした青学大。その勝利の裏にはチームの結束力と4年生たちの支えがあった。各試合後のインタビューで印象に残ったのは、中西聖輝(コ3=智辯和歌山)や初谷健心(総3=関東第一)といった下級生たちの言葉だ。「4年生がずっと声をかけてくれた」「4年生を負かしたくない」。その言葉には、先輩への深い感謝と強い信頼が込められていた。青学野球部の特徴は、学年を超えた仲の良さにある。「上下関係は本当なくて誰でも私生活では友達のような感じ。でも一線は張ってるというか、いい意味の壁があって誰にでも物が言える」と今回の主役である佐藤尊将が語るように、良好なチーム文化が築かれている。

その中で佐藤はムードメーカーとして重要な役割を担っていた。試合中「ピンチの場面とか流れが悪い時、ベンチが暗い時は思い切って自分が笑わせるようなことじゃないですけどふざけたことを言って、雰囲気を和ませて」いたと振り返る。その何気ない声かけや振る舞いが、チーム全体の雰囲気を明るく保ち、勝利への原動力となっていたのだ。

チームメイトをベンチから迎え入れる佐藤

しかし、そんな4年生たちはかつて「問題児学年」と呼ばれていたという。「いろいろやらかした人が多くて坊主にした学年で…」と佐藤は振り返る。当時はリーグ2部への降格も覚悟していたほど厳しい状況だった。それでも、後輩たちの奮闘と4年生自身の努力が実を結び、青学史上初となる四冠を成し遂げた。「何があるかわかんないな、と。この4年は今まで経験にしたことのない4年間だった」と語る佐藤の言葉には、困難を乗り越えた達成感がにじんでいた。その一方で「今まで野球してきた中でいちばん悔しい4年間だった」と語る。快挙の裏には佐藤の苦悩があった。

高校時代には名門・智辯学園で1年春からスタメンマスクを任され、その名を知らしめた佐藤。青学大硬式野球部の門を叩いた彼は、未来の主力として大きな期待を背負っていた。しかし、佐藤を待ちうけたのは強豪捕手たちとの競争だった。2学年上には今秋のオリックス・バファローズからドラフト4位で指名を受けた山中稜真(23年社卒)、2学年下には大学日本代表候補の渡部海(コ2=智辯和歌山)。才能あふれる捕手たちに囲まれながら、佐藤は4年間必死に努力を重ねた。それでも、公式戦で捕手として出場する機会は訪れなかった。それでも、佐藤にとって「捕手」というポジションは特別なものであり、唯一無二の存在だった。捕手としての出場が叶わなかった悔しさについて「出たかったっていう気持ちはあるんですけど、チームが勝つためには手段を選ばないというか。チームが勝つためにやってきたのでそこまでというあれはないですね。チームが勝てばなんでもいいと思うので。」と力強く語った。公式戦での出場はなくとも、佐藤は『扇の要』としてチームを支え続けた。

そんな佐藤が初めて公式戦の舞台に立ったのは大学3年次の春季リーグの中大戦。代打として初打席に立った。その時の心境については「緊張が多いですね。ベンチから応援してくれてるなって感じなんですけど全然声が聞こえなくて。監督だけの声しか聞こえない。」と語る。初の出場機会は、佐藤にとって忘れられない瞬間となったに違いない。

4月17日、亜大との一戦で代打として起用された佐藤。その2球目のストレートを弾き返し、打球はレフト方向へ伸びて2塁打となった。この一打は、佐藤にとって大学公式戦での初安打となる記念すべき瞬間だった。塁上では感情を爆発させるように力強いガッツポーズを見せ、ベンチからも大きな歓声が湧き上がった。仲間たちの祝福に包まれたその光景は、彼の努力が結実した瞬間を象徴していた。

2塁打を放ち、ガッツポーズをみせる佐藤

快挙を成し遂げたラストシーズンはどのくらいの速さだったか問われると「新横から名古屋いくくらい。いや、新大阪から神戸行くくらい。いや、山手線が来るスピードくらい。」と持ち味の面白さで笑いを交えながら話してくれた。

秋季リーグ表彰式にてトロフィーを授与された佐藤

期待する後輩には強肩強打の捕手・久松凌大(国政2=御殿場西)の名前をあげた。佐藤同様、捕手としての出場機会がなかなか見いだせずにいる選手だ。「同じ捕手として一番可愛がっていて。ポテンシャルはめっちゃ高くて青学でも全然通用するぐらい。1年の頃よりもレベルが上がってるので、あと2年あるのでなんとかなる」と話す。藤原夏暉(法3=大阪桐蔭)主将率いる新チームについては「来年以降も八冠目指して後輩たちがやってくれると思うので、陰ながら応援したいと思う」と熱いエールを送った。

仲間たちと撮影に応じる佐藤(下段右から3番目)

佐藤は卒業後は地元関西に戻り、京都に拠点を置く軟式野球チーム・株式会社アイアイ野球部で野球を続けるという。「高校の先輩がそこで働いていて。そういう繋がりで一緒に仕事したいと言われて」入社を決めたという。青学での4年間を通して学んだことは「ホウレンソウ。報告連絡相談」安藤寧則監督が常日頃から口にしていた言葉だ。「社会でやって行くためにそういうのをしっかりこまめにやっていきたい」と語る。新天地でも彼がどのような活躍を見せてくれるのか、大いに期待が寄せられる。

(記事=比留間詩桜、写真=遠藤匠真・川﨑史緒・比留間詩桜)

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