【硬式野球】異例の最下位決定戦が遂に決着!2連勝で1部残留を決める

硬式野球
残留を大きく引き寄せる同点打に大喜びのナイン

東都大学野球野球 春季1部リーグ 対中大 最下位決定戦 6月3日 於・UDトラックス上尾スタジアム

◆結果◆
青学大 000 100 202|5
中 大 003 000 000|3

◆出場選手◆
1 中 中島大輔 龍谷大平安
2 三 佐々木泰 県岐阜商業
3 二 山田拓也 東海大相模
4 一 片山昂星 東海大菅生
5 左 山中稜真 木更津総合
6 右 大手晴 横浜→中野波来 大阪桐蔭
7 指 小田康一郎 中京
8 遊 手塚悠 常総学院
9 捕 佐藤英雄 日大三→青木颯汰 聖望学園
P 児玉悠紀 日大三→金城伶於 神村学園→下村海翔 九州国際大付


東都大学野球春季1部リーグの最下位決定戦はもつれにもつれ、第二週の第3試合に突入した。

この最下位決定戦の順位決定方法は、第二週終了時点で勝敗が同じだった場合「総失点数」で決め、それでも同じだった場合「得失点率」で決めるというもの。前日の6月2日までの総失点数は青学大13、日大15、中大15。そのため青学大は「勝利か1点差での敗戦なら残留確定。2点差での敗戦なら得失点率差での判断。3点差以上での敗戦で入れ替え戦出場」という条件のもとで最終戦に挑んだ。

運命の最終戦でスターターを任されたのは、リーグ戦から試合を作ってきた2年生左腕の児玉悠紀。日大三高時代からバッテリーを組んでいる佐藤英雄と中大打線に立ち向かった。

先発の児玉

先に攻撃を仕掛けたのは青学大。2回表、2死から大手が四球で出塁すると、次打者・小田がセンター方向へのやや浅いフライを放つ。打球が落ちる寸前でセンターがキャッチしたかのように見えたが、塁審の手は上がらずフェアを宣告。その間にランナーの大手が一気にホームへ生還し、残留にむけて青学大に大きな先制点が入ったかのように見えた。しかし、ここで中大・清水監督が判定に対して審判団に抗議。審判団による協議の後、判定は一転してアウトに覆った。一方、1点が重要な試合で判定が覆っても、青学大・安藤監督はベンチから動くことはなかった。この意図に関して質問された安藤監督は「誰が見てもアウトです。それをゴネたところで…。それよりは、行け!と(選手たちを)送り出してやったほうが(良い)」と判定に抗議の意思を見せず、選手たちを鼓舞することを優先したとの考えを示した。

小田の打球は一時ヒットと判定されるも、抗議で覆りアウトに

先制のチャンスも無得点に終わったが、序盤は青学大先発の児玉がテンポの良い投球で1,2回を零封。このまま順調に試合を作るかに思えたが、3回裏に死球を与えてからリズムが狂い始める。死球で出したランナーを送りバントで1死2塁の得点圏に進められると、そこからも流れを止められず3連打で2点を失ったところで投手交代。序盤の投球は完璧だっただけに、悔しい降板となった。

変わって登板した金城もヒットこそ許さなかったが、1死満塁から内野ゴロの間に三塁ランナーが生還し3-0と突き放されてしまう。

2番手の金城

3点差以上はなんとしてでも避けたい青学大。4回表、先頭の山田がライトへの2ベースヒットで出塁。続いて送りバントと犠牲フライで手堅く1点を返すことに成功する。

まずは山田がホームを踏み1点を返す

4回からは主に今季抑えとして活躍した下村が登板。何度かランナーを出してピンチを招くも、要所で抑え中大にホームを踏ませない。

ロングリリーフをこなした下村。来季は先発での活躍に期待だ

ランナーが出ても守備陣の奮闘でホームは踏ませない

同様に青学大も中盤はチャンスを作るもあと一本が出ない。思うように点が入らず、中盤は無得点で試合が進んだ。

試合が再び動き出したのは1-3の2点ビハインドで迎えた7回表。小田と青木の安打で2死2,3塁のチャンスとすると、打席には好調の1番・中島。長打が出れば同点の場面で、中大・西舘から見事2点タイムリーヒットを放ち、試合を振り出しに戻した。この貴重なタイムリーを放った打席での心境を聞かれた中島は「チャンスを作ってる中でも追いつけなかったり、という場面が続いていて。下村が今季初のロングリリーフ頑張ってくれている中でなんとかしようと。自分の前も続いて、(青木が)2アウトから回してくれたので、何とか(しよう)という思いで打席に入りました」とチームメイトへの感謝も忘れなかった。

反撃のきっかけとなるヒットを放つ小田

青木は連打でさらにチャンスを広げる

待望のタイムリーが中島から飛び出る

残留を大きく引き寄せる同点打に大喜びのナイン

なおも青学大の勢いは止まらない。9回表、8番手塚と9番青木が連打で2死1,3塁のチャンスを作ると、打席にはまたもや中島。リーグ戦で打ちあぐねていた東都屈指の好投手・西舘からまたもタイムリーを放ち、4-3と遂に逆転に成功する。ここで攻撃は終わらず、2番佐々木が放ったサードゴロは相手のエラーとなり更に1点を追加。ダメ押しの追加点を入れ、5-3と更に中大を突き放した。

今日2本目の中島のタイムリーで生還する手塚

佐々木の打球をサードがエラーし、点差は2点に

2点のリードを貰い、9回のマウンドも下村が立つ。リーグ戦開幕当初は肘の状態を考慮して短いイニングだけと話していたが、この大一番でロングリリーフを解禁。難攻不落だった西舘を攻略した打線に報いるため、最終回のマウンドも無失点で乗り切った。下村は6イニング無失点と秋の先発復帰へと繋がる形でリーグ戦最終試合を締めくくった。

残留を決める勝利で笑顔になる青学大野球部

ちなみに9回裏の中大の攻撃で、青学大が打者全員に申告敬遠をすれば、押し出し四球で青学大は5-6×のサヨナラ負けとなる。しかし、総失点数差で青学大の残留が決まる。そのような点数の計算はしていたのかと報道陣から問われると、安藤監督は「当然していました。これ(点数の計算)はお互い分かっていると思います。ただ、最後そういうことになれば、そのつもりではいたので。選手には話してなかったんですけど。これは(どの大学も)同じだと思います。たまたまウチがそうでしたけど。」と申告敬遠の可能性もあったことを示した。

もし9回裏に同点で満塁の状況になったら、申告敬遠はあったのか、との問いには「考えました。それはもう、しょうがないと思います」とも答えた。それでも「こうやって勝ち切ってくれたので、見え方としては良かった」と無事に勝利できたことを笑顔で振り返った。

二週目までもつれ込んだ最下位決定戦も遂に終了。青学大は見事2連勝で締めくくり、令和4年度春季リーグは4位でフィニッシュ。無事1部残留を決めた。最下位決定戦について安藤監督は「2回プレーオフをやったというのは、いろいろな意味で入れ替え戦に匹敵する、(東都の)厳しさというか、それを感じられたと思うので。何とかこれを、さらにチームとして、個人として受け止めて、必ず秋につなげて生かしたい」と秋に向けて前向きな姿勢で語った。

キャプテンの山田は今日の結果を受け「とりあえずホッとしているのが一番です。今日は最後、点差はいろいろあったんですけど、しっかり自分たちで勝ち切って、2勝して自分たちの力で残ろうっていう話をしていたので。ミスもまだまだ反省するところたくさんあるんですけど、とりあえず形として勝てたというのはすごく大きいかなと思います」と反省点を示しつつも安堵した表情で語った。

プレーオフ合わせて計16試合を戦い、最後は観衆に礼をする青学大野球部

大分開幕を2連勝で乗り切り、勢いに乗ってリーグ戦をスタートした青学大。一時は亜大と優勝争いをする勢いだったが、まさかの4連敗で同率最下位に転落。そこから最下位決定戦が始まり、第二週の最終戦までもつれこんだ末に4位で残留を決めた。怒涛の展開だった今季は課題も多く見えた半面、小田ら新戦力の台頭など収穫の多いシーズンでもあった。今シーズンの投打を総括すると、個々人の打撃力は素晴らしく得点力は申し分ない反面、投手陣は昨年柱だった森圭名(22年卒、現・三菱重工East)の穴を埋め切れておらず、北村・児玉の両左腕に先発を頼りきりだったことが課題と言えるだろう。そこで秋季は右腕の下村海翔の先発復帰に期待したい。手術明けで本来の投球ができるようになってからまだ数か月しか経っていないが、秋に先発を務められればこれまで以上に様々な戦い方が出来るだろう。

青学大は1部リーグ校の中で最も優勝から遠ざかっており、選手たちは神宮での優勝を知らない。それでも個人個人が持てる力を発揮し、チームが課題に挙げていたあと一勝をつかみ取れれば秋季リーグでの優勝は見えてくるはずだ。2部時代からのスタートだった4年生は秋季リーグが最後のチャンスとなる。この最下位決定戦の経験を来シーズンに活かし、秋季は安藤監督が笑顔で神宮の宙に舞っていることを願うばかりだ。

(写真=川﨑史緒、記事=渋谷聡志)

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました