大学三冠の快挙を成し遂げた今年のチームの4年生は、先日の明治神宮野球大会で青山学院大学硬式野球部を引退しました。青山スポーツでは4年生全15名にインタビューを行い、この4年間を振り返っていただきました。最上級生としてチームを牽引してきた選手・スタッフの皆さんの熱い言葉を全10回に渡ってお届けします。
第6回は、創部以来初の女性主務として今年のチームを最も近くで支えてきた昆加奈子(地4)主務編です。
大学三冠にプロ3人の輩出を果たした今年のチーム。大躍進を遂げた激動の1年間を、昆加奈子(地4)は最前線で支え続けた。創部以来初の女性主務として奔走したラストイヤーは、彼女にとって挑戦の連続。そのすべてを全力で楽しみながら駆け抜けた。
昆の思い描いた大学生活は、新型コロナウイルスにより大きく狂わされた。「マレーシアに留学するためだけにこの大学に入って地球社会共生学部に入ったんですけど」夢見た留学を諦めざるを得なくなり、大学に入学した意味を見失った。「あぁもう何しよう」悶々とした気持ちを体育会出身の父に相談すると野球部への所属を勧められ、中高でソフトボールをやってきた昆はその日のうちに寮の携帯へ電話をかけた。そして、あっという間に入部が決まり、マネージャーとしての生活が始まった。「最初は行きたくなかったです。いかにシフト減らすかっていうのを考えてました(笑)。」先輩や男子マネージャーとの距離間に悩んだ2、3年次は野球部での活動を楽しめていなかったと話す昆。しかし、主務となりチームの一員であることを実感し始めると、部活が楽しくなり始めた。
新チーム始動当初の主務は男子マネージャーの熊本凌(法4)が務めていたが、安藤寧則監督の方針により、程なくして配置転換が行われる。「昆さんはじめとする女子マネージャーは、それこそ裏方というか全然目立つことができないやりがいを感じづらい仕事ばかりだったので、そこを監督が判断して、それだったらマネージャー3人でそれぞれの役割を担ったほうが、マネージャーとしてもチームとしてもよりよくなるんじゃないかというところで、新チーム始動してちょっと経ってから配置転換という形になりました。」と熊本は語る。大学や外部との窓口を担う主務という役職には、コミュニケーション能力に優れた昆が抜擢されたのだ。
主務となってからは、安藤監督、中野真博コーチ、マネージャーの熊本、樋口舞(コ4)とともに様々な新たな取り組みに挑戦した。寮やバスでの様子を選手同士で写真に収めてもらい、それを保護者に送る取り組みを行うと好評を得た。「こんな顔して食べてるんだねって言われたのがすごい印象的で、女の子ならではの視点だったのかなっていうふうに思います。」初の女性主務としての視点も活かしながら精力的に活動する姿に「本当にすごい人です。」と樋口も讃嘆する。選手らと共に寮生活を行う熊本との連携にも気を配った。「寮の中の選手の様子とか、寮でなにか困っていることがあったら私から大学に言わないといけない。私は寮生活じゃないので、いかに熊本と連携をしてそこのアンテナを張るのかという部分がすごい大変でした。」女性主務ならではの苦労もあったが、綿密にコミュニケーションを取りながら、選手たちの生活を支えた。
毎朝7時にグラウンドへ通い、試合となればベンチに入ってスコアをつけ、選手らと共に一喜一憂した。最も近くで支えてきた今年のチームについて問われると「ほんっとうに明るいし、みんなでバカになれるチームかなって思います。」と話す。練習終わりに全員で片づけを行う姿、試合中に誰よりも声を出す姿、何事も全員でやろうとする心意気、昆が見てきた選手の行動全てに、強さの秘訣が詰まっていた。
「いつでも帰ってきていいよ、家族じゃん」明治神宮野球大会決勝後の打ち上げで、安藤監督と中野コーチからこう声をかけられた。たくさんの言葉を交わし、「なんでもやっていいよ」と寛容に受け入れてくれた指導者からの言葉には「すごい嬉しかった」と笑顔を見せる。「めっちゃマブ達です(笑)。」と話すほど仲が良く、温かく支えてくれた監督コーチ陣の存在は、この1年を駆け抜ける原動力となっていた。青学大硬式野球部は昆にとって「戻ってこれる、帰ってこれる場所」となり、人生の財産となる仲間や指導者に出会うことができた場所。「このチームの一員として今年1年間を駆け抜けられたっていうのがすごい幸せで、本当に大切な仲間に出会えたなって思います。」と胸の内を語り、後輩たちには「また遊びに行ったときにもいつもどおりの1年生から3年生の選手でいてほしいなって思います。あとは、また、笑顔で会えたらなって思います。」とメッセージを送った。
「他の学生ができないことをやっているっていうのが自分の中ではすごく誇りで、一生言えるなって思います。一生、青山学院大学硬式野球部出身だからって言うし、言ってやろうと思います(笑)。」創部以来初の女性主務を見事にやり遂げた彼女の表情は、清々しい。野球部として過ごした3年間で身に付けたスキルと自信は、他の誰にも負けない強さを持っている。青山学院大学硬式野球部出身の誇りを胸に、次のステージでも新たな道を切り拓き、更なる飛躍を遂げていく。
(記事=川﨑史緒、写真=遠藤匠真・川﨑史緒)
◆番外編◆
記事には組み込めなかったエピソードを紹介!
ーラストイヤーの1年間で頑張ったこと
「今年1年、自分として部活動の中で一番頑張ったのはスコア書くことです(笑)。ほんとにスコア書けなくて読めもしなかったので、オープン戦で熊本と一緒に入って、今のはストライクだったとかボールだったとかっていうところまで教えてもらって、それが、まあなんとなく読めるようになってなんとなくみんなに見てもらえるようになったので、それが成長した点かなと思います。すごく大きな成長です。」
ー主務として経験した楽しかったこと
「楽しかったのは、今まで経験したことがないとかやったことがないことをすべてやらせてもらえたって言うのが自分としてはすごい嬉しかった。自分から道を切り拓いていくのがすごい楽しくて、これやったことないんだったら私がやって、絶対完璧に成し遂げようって強い思いを持ってたので、そこは経験とか、監督たちも寛容に受け入れてくれて、それをなんでもやっていいよって言う風に言ってくれたところがすごいありがたいなって思います。」
ー安藤監督、中野コーチとの関係性
「中野さんとか監督が、朝7時に行ったときに挨拶だけで終わらせないっていうのがすごいあったそうで、「おはようございます!」って挨拶に行ったときにそこで終わらせることなく10分くらい毎日話す。結構話しかけてくれて、「最近どう?」みたいな(笑)。野球の話は一切したことがなくて、「何好きなの?」とか「食べ物何好き?」とか、「監督何好きですか?」って聞いたりとかしたので、そういう、合間の時間の会話をすごい大切にできたことが、優勝とかに結びついたのかなって思いました。」
ー改革の1年間だったのか
「マジで全部やったこと自体が新しいこと。「やっちゃいなよ」みたいなのが監督のモットーなので、それに私たちも「乗っちゃおうよ」っていくから(笑)。」
ー後輩へのメッセージ
「1年生から3年生の選手にはすごい楽しませてもらって、同期みたいに話しかけてもらった。すごい気さくに話しかけてくれたなっていうのが印象なので、また遊びに行ったときにもいつもどおりの1年生から3年生の選手でいてほしいなって思います。あとは、また、笑顔で会えたらなって思います。今度は笑顔で。」
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