第55回 明治神宮野球大会 対天理大 準決勝 11月24日 於・明治神宮野球場
◆結果◆
天理大 013 000 000 0|4
青学大 310 010 000 1x|5
◆出場選手◆
1 二三 藤原夏暉 大阪桐蔭
2 左 南野倫平 龍谷大平安 → 星子天真 大阪桐蔭
3 一三 初谷健心 関東第一
4 一 松本龍哉 盛岡大附 → 二 森澤拓海 履正社
5 中 中田達也 星稜
6 捕 渡部海 智辯和歌山
7 右 青山達史 智辯和歌山
8 遊 山口翔梧 龍谷大平安
9 投 児玉悠紀 日大三 → 渡辺光羽 金沢学院大附 → 打 西川史礁 龍谷大平安 → 投 鈴木泰成 東海大菅生
P 児玉悠紀 日大三 → 渡辺光羽 金沢学院大附 → 鈴木泰成 東海大菅生
準決勝に駒を進めた青学大は相手の意表を突く攻撃でミスを誘い、先制に成功。しかし土壇場で同点に追いつかれる。延長タイブレークに突入し10回1死満塁とすると、初谷健心(総3=関東第一)がサヨナラ打を放ち試合を決めた。天理大を延長10回タイブレークで破り、2年連続で決勝進出を決めた。悲願の大学4冠へ王手をかけた。
先日の福岡大戦において肩を負傷した主将・佐々木泰(コ4=県岐阜商)、右人差し指を骨折している西川史礁(法4=龍谷大平安)、右有鈎骨骨折が判明した小田康一郎(史3=中京)のクリーンナップ3人がスタメンを外れるというまさかの事態に。その穴を埋めるべく、「全員戦力」となって戦いに挑んだ。
準決勝の舞台の先発マウンドに上がったのは、エース・児玉悠紀(コ4=日大三)。児玉は先頭打者にレフト前ヒットを許すも、その後の打者はテンポよく打ち取り、初回無失点の立ち上がりをみせる。
その裏、一昨日の福岡大戦ではソロホームランを放つなど打撃好調の初谷がヒットを放つと、次の打者の松本龍哉(コ3=盛岡大附)は四球で出塁に成功。2死1・3塁のチャンスを招き、打席に立つのは中田達也(社3=星稜)。中田はバットを折りながら打球をライト方向にはじき返すも、天理大セカンド・大森のスーパーキャッチに阻まれ、得点とはならなかった。
2回裏。先制点をあげて勢いに乗りたい青学大は渡部海(コ2=智弁和歌山)と青山達史(コ1=智辯和歌山)の智辯和歌山コンビの連打で無死2・3塁のチャンスを作る。続く打者山口翔梧(営1=龍谷大平安)のショートゴロの間に渡部が生還し、先制に成功。
さらに藤原夏暉(法3=大阪桐蔭)が捉えた低めのカットボールは1・2塁間を抜けるヒットとなり、追加点を挙げる。松本の打席では相手投手の暴投の間にランナー藤原が帰還し、この回一挙3得点と乗ったら止まらない強力な青学打線を見せつけた。
援護を受けリードを守り切りたい児玉は先頭打者に四球を与えると、味方のエラーも絡み、1死2・3塁のピンチを招く。対峙するは強打者・石飛。児玉は得意のスライダーで石飛を打ち取ったものの、3塁ランナーが帰塁し、1点を献上した。
先頭打者の中田が自身今大会初ヒットを放つ。渡部が送りバントを決めると、続く青山の打席の間の暴投で俊足の中田は快足を飛ばし、3塁を回って本塁生還を果たした。青学大は隙のない走塁で追加点を挙げる。
児玉は冷静に打者を打ち取っていったものの、2死から四球を与えると続く9番・的場に右中間へのヒットを許す。さらに1番・井脇に放ったストレートは甘く入り、レフトスタンドに飛び込むツーランホームランとなった。4―4の同点に追いつかれ、児玉はここで無念の降板。
2番手としてマウンドに上がったのは渡辺光羽(営3=金沢学院大附)。一昨日の福岡大戦ではゲームセットまであと1アウトとするもタイムリーを浴びた。その失点を取り返すべく変化球を巧みに操り、テンポよく打者を打ち取っていく。
天理大先発・的場と渡辺は次々と三振を奪っていく。共にスコアボードに0を並べ、一進一退の攻防が続く。
9回裏、2死で打席に立つのは山口。山口は前戦の8回裏、西川がネクストバッターサークルで待機するもダブルプレーで抑えられ、悔しさを滲ませていた。なんとかチームに貢献しようと山口は必死にボールに食らいつき、今大会初ヒットとなるセンター前ヒットを放った。そして続く打席に立つのは西川。山口は好機を演出し、憧れの龍谷大平安高校の先輩にチャンスを託した。
西川は9月25日の日大戦で死球を受け、右手人差し指を骨折。その後のリーグ戦は全て回避し、この神宮大会にすべてをかけたチームの主砲がついにバットを持った。西川は初球から持ち味のフルスイングで観客を沸かせる。最後は低めのスライダーで三振に打ち取られたものの、約2カ月ぶりの復活はチームの活力となったことだろう。西川はこの打席を「スイングをした時に力が入りすぎていた」と振り返った。
そして試合は延長タイブレークに突入。この回からマウンドに上がるのは守護神・鈴木泰成(社2=東海大菅生)。「4年生を負かせたくない」と強い覚悟を決めて挑んだ。鈴木は冷静に、わずか一球で先頭打者を打ち取ると、続く打者は三振で打ち取る。2死1・2塁で3番・大森に放った打球はショート山口が見事なキャッチを披露。鈴木は雄叫びを上げ、勝利を打線に託した。
その裏、先頭打者の藤原の進塁打で1死2・3塁とする。続く打席には代打・星子天真(史2=大阪桐蔭)が向かう。しかし、星子は申告敬遠で満塁策を試みられる。
一打サヨナラのチャンスで打席に立つのは今大会打撃好調の初谷。勝負となる打席を前に「やってやるぞ」と興奮気味だった初谷に安藤監督からは「もっと落ち着いていけよ」と声が掛けられたそう。
「抜けてくれ」その一心で打った打球は二塁を抜け、サヨナラタイムリーとなった。青学大ナインは雄叫びを上げながらベンチから飛び出し、初谷の決死の一打を称えた。初谷は「あぁ良かった、まだ4年生とやれる」と安堵の表情を浮かべた。
大学四冠まであと1勝。悲願達成の瞬間を迎えるべく、青学大ナインが再び戦いの舞台に立つ。新チーム始動時から掲げてきた大きな目標。その背景には昨年の慶應大との激戦で味わった悔しさがある。惜敗から得た教訓を胸にチーム全員が一丸となり、挑戦を続けてきた1年間だった。どんな苦境にも折れずに積み重ねた努力が、ついに試される時が来た。対戦相手は強豪校を次々と撃破し、勝利への執念を見せ、今大会で勢いに乗る創価大。青学大ナインの挑戦が、この先どのようなドラマを紡ぐのか。明日の試合が新たな伝説の幕開けとなることを、誰もが期待している。11月25日午後1時、運命のプレイボールが告げられる。
(記事=比留間詩桜、写真=遠藤匠真・川﨑史緒・高木一郎・田原夏野・比留間詩桜)
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