今年度史上5校目の大学四冠を成し遂げた青学大。その中心にいた4年生は、優勝に輝いた明治神宮野球大会をもって硬式野球部を引退しました。青山スポーツでは4年生8名にインタビューを行い、青学大硬式野球部で過ごした4年間を振り返っていただきました。最上級生としてチームを牽引してきた4年生の皆さんの熱い言葉を全8回に渡ってお届します。
初回の主人公は小柄ながらも力強いピッチングが魅力のサウスポー・新倉寛之(社4=東海大菅生)選手です。
青学大硬式野球部での4年間を振り返った時、真っ先に口にしたのは「チーム力が大事」という一言だった。「昨年のチームの方が圧倒的に戦力があったが、今年勝ち切れたというのは、仲の良さ、人柄、チームカラーというような4年生の力があったからなのかな」と語る。その仲の良さは青学大ならではの大きな特色といえるだろう。試合前の練習では学年の垣根を越えて楽しげに話す姿が印象的で、オフの日にも一緒に出かけることが多かったという。「上下関係はない。緩いわけじゃないですけど、一線ある中での楽しさというか」そう今年のチームを分析した。こうした仲の良さや部内の風通しの良さこそが、今季の快挙を支えた大きな原動力だったのだろう。
新倉は入学早々頭角を現した。2021年4月9日。東都1部春季リーグ、立正大との2回戦でリリーフとして初登板を果たした。東京の名門・東海大菅生高校出身の新倉は高校時代から神宮球場には親しみがあったという。そんな球場ではあるが、青学大野球部として初めてマウンド上がった時の心境については「思ったより観客の声とかが聞こえるな、っていう。でもいざ立ったらバッターの雰囲気とかはやっぱり大学だなという感じの印象でした」と当時を振り返った。この試合は打者7人に対し被安打0無失点と堂々のピッチングを披露したように思えたが「楽しさより緊張が勝ちましたね。緊張しちゃってあーだめだ、みたいな感じでした。自分の実力が発揮できないで終了、みたいな。」と話した。初登板を終えた当時の新倉は自分の実力はこんなもんじゃない、もっと強くなってチームを担う選手になりたい、そんな強い決意があったことだろう。新倉は1年秋に2試合、2年春に1試合中継ぎとして登板。無失点ピッチングでチームの戦力として貢献した。しかし、その後は出場機会に恵まれることはなかった。
月日は流れ、迎えたラストイヤー。新倉に登板機会は訪れなかったものの、秋季リーグでは大半の試合でベンチ入りを果たし、4年生としてベンチやブルペンからチームを支え、仲間たちを鼓舞し続けた。チーム戦略の要ともいえるベンチとブルペンについて、「ブルペンはいい意味で緩い雰囲気というか。ブルペンにいてリラックスしたり締めるとこ締めたりみたいな。正直ベンチの方が緊張感ありますね。」と試合中の舞台裏を明かしてくれた。また、ベンチでは安藤寧則監督の熱い指揮が響いていた。「監督の声は本当に通りますね」と語る新倉。その存在感は選手たちを奮い立たせ、チームの結束を強める大きな役割を果たしていたに違いない。
この一年を振り返り新倉は「あっという間だった」と話す。昨年の明治神宮大会で慶應大に敗れて新チームが始まった。今年はグラウンドの改修に伴い、約1カ月と例年より長い鹿児島合宿を行っていた青学大野球部。「キャンプがめっちゃ長くて。淵野辺早く帰りたいってずっと言ってたんですけど、それが終わって春のリーグ戦が始まって、もう神宮大会も終わって。」その充実ぶりを振り返る言葉には時間の速さがにじむ。引退した今は趣味のゴルフに没頭しているという新倉。投手として培った肩や腕の柔軟性、筋力を存分に発揮し、好スコアを叩き出す姿が目に浮かぶ。
来年以降期待する後輩を尋ねると考え抜いた末、新倉はヴァデルナフェルガス(国経3=日本航空)の名前を挙げた。今年の春は主に中継ぎとして登板し、長い手足を生かしたしなやかな投球で数々のピンチをしのぐ活躍をみせていたヴァデルナ。しかし、秋季はベンチ入りは果たすものの、マウンドのその姿を現すことはなかった。今は制球に苦しんでいるというヴァデルナ。しかし「ストライク入ったら打たれないんです絶対。なのでストライク入ったらプロ行けんじゃないかな、という期待はあります」と太鼓判を押す。さらなる高みを目指して戦い続ける後輩たちをこれからは応援していくという。
4年間を通して学んだことを尋ねると「小言が大事(おおごと)」と端的に示した。「例えばちょっと髭生えてたりとかグラウンドにボール落ちてたりとか。そういう小さなことが大事になっていくんだな、と思ったので小さいことから気にしていって大ごとにならないように社会人として頑張って行きたい」と冷静に語ってくれた。新倉は大学で野球を引退し、卒業後はコカ・コーラへの就職が内定しているという。青学大野球部での経験を活かし、立派な社会人として羽ばたくこと間違いない。
(記事=比留間詩桜、写真=遠藤匠真・比留間詩桜・山城瑛亮)
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