東都大学野球 春季1部リーグ 対東洋大 第1回戦 4月22日 於・明治神宮野球場
◆結果◆
青学大 100 003 000 002 2|8
東洋大 100 030 000 002 0|6
◆出場選手◆
1 二 藤原夏暉 大阪桐蔭
2 中 中田達也 星稜
3 一 小田康一郎 中京
4 指 松本龍哉 盛岡大附 5 捕 渡部海 智辯和歌山
6 三 初谷健心 関東第一
7 左右 大神浩郎 福岡大大濠 → 打 星子天真 大阪桐蔭 → 右 矢野丈太朗 國學院久我山
8 遊 山口翔梧 龍谷大平安
9 右 青山達史 智辯和歌山 → 左 南野倫平 龍谷大平安
P 中西聖輝 智辯和歌山 →ヴァデルナフェルガス 日本航空 → 渡辺光羽 金沢学院大附 → 鈴木泰成 東海大菅生
青学大は初回に先制するも、逆転やミスによる失点に苦しみ、追う展開に。だが4年生ら意地の連打で追いつき、以降は一進一退の攻防に。延長戦では南野倫平(総3=龍谷大平安)のタイムリーで勝ち越すも、直後に同点とされる。13回表には松本龍哉(コ4=盛岡大附)が勝負を決める一打を放ち、再びリード。最後は鈴木泰成(社3=東海大菅生)が魂のストレートで締め、約3時間半の死闘に終止符を打った。
試合は初回から動く。リードオフマン、藤原夏暉(法4=大阪桐蔭)がツーベースヒットで出塁する。その後一死三塁とし打席を迎えるのは打撃好調の小田康一郎(史4=中京)。小田は打球をライト方向にうまく弾き返し、先制に成功する。

ツーベースヒットを放った藤原

先制タイムリーを放った小田
先発のマウンドに上がったのは中西聖輝(コ4=智辯和歌山)。静かな気迫を漂わせながらも表情はいつも通り落ち着いており、チームを勢いづける立ち上がりが期待された。丁寧にコースを突く投球でテンポの良い投球をみせるも立ち上がりに2本のヒットを浴びる苦しい展開に。それでも冷静さを失わず、変化球を織り交ぜながら粘りの投球で崩れずに1点で食い止めた。

先発の中西
怪我の影響で戦列を離れていた渡部がこの日スタメンに名を連ねた。先頭打者の渡部海(コ3=智辯和歌山)はブランクを感じさせない鋭いスイングで初球を捉える。さらに続く初谷健心(総4=関東第一)にもヒットが飛び出すも、後続が倒れ得点にはつながらなかった。

打撃好調の初谷。今日もヒットが飛び出した
初回に1点を失ったものの、中西はすぐに立て直しを図った。2回からは持ち味である緩急とコーナーワークを駆使し、相手打者の狙いを外していく。ストレートに緩いカーブやキレのあるスライダーを織り交ぜ、2回・3回・4回と三者凡退に抑える完璧な内容で淡々とアウトを積み重ねる。

中西はテンポよく打者を打ち取った
5回裏、ここまで三者凡退を3イニング続けるなど、見事な投球を披露してきた中西。しかし試合は一筋縄ではいかなかった。先頭打者に死球、続く打者には自らのエラーで出塁を許すと放った甘く入ったストレートを東洋大9番・吉田に弾き返され逆転を許してしまう。

好投も失点を喫した中西
逆転を許しなおも二死二三塁と苦しい状況で、青学大ベンチは動いた。マウンドに送り出されたのは、ここまで防御率0.00を誇る左腕・ヴァデルナフェルガス(国経4=日本航空)。力強いストレートと鋭く落ちるスライダーを武器に冷静に打者と対峙。しかし、ここで守備の綻びが生まれてしまう。内野の失策により追加点を許すと、さらに低めのスライダーがワンバウンドし、捕手のグラブを弾く捕逸。その間に三塁ランナーがホームを駆け抜け、まさかの失点が重なる。試合の流れを変えるべく登板したヴァデルナだったが不運も重なり、流れを完全には断ち切れないまま苦しいマウンドとなった。

2番手として登板したヴァデルナ
なんとしてでもこの嫌な流れを断ち切りたい青学大打線。6回表、先頭の中田達也(社4=星稜)が粘りを見せヒットを放つ。さらに小田もヒットで出塁すると打席を迎えるのは松本。これまでの試合では得点圏にランナーを置きながらも好機を生かし切れていなかった。しかし、この場面では違った。甘く入ったストレートを仕留めるタイムリーヒットを放った。勢いそのままこの日打撃好調の初谷にもタイムリ―ヒットが飛び出した。ここまでチームを引っ張ってきた4年生4人の意地の連打で、貴重な2点をもぎ取った。

本塁生還し雄叫びを挙げる中田
なおも一死二三塁とし、相手のフィルダーチョイスの間に三塁走者の渡部が生還。同点に追いついた。

渡部は挟殺にあいながらも本塁生還を果たした
この流れを渡すまいとマウンドに上がったのは今季初登板の渡辺光羽(営
4=金沢学院大附)。昨シーズンは先発そしてリリーフとしても活躍していた左腕が今春、ようやく神宮に見参した。渡辺は打たせて取るピッチングでわずか6回9球、7回は8球とテンポよく打者を仕留めた。

3番手の渡辺
8回裏、ここまで好投の渡辺だが、先頭から二者連続でヒットを許し、無死一二塁のピンチを招いてしまう。1点の失点も許されない場面でマウンドに上がるのは鈴木。鈴木も今季未だ無失点で絶対的な信頼を寄せられている投手だ。持ち味のストレートを軸に打者を打ち取っていく。5番・高中に投じた2球目には151キロを記録した。

力投を見せた鈴木
東洋大の好守備に阻まれ1点が遠い展開に。試合は日大1回戦に続き、2試合連続で延長タイブレークへ突入する。
10回表、緊張感が一層高まる中ランナー一二塁の場面で打席に立つのは小田。前試合である対日大1回戦では同じ状況から劇的なスリーランホームランを放ち、ヒーローとなった男だ。しかし小田は意外にも初球からバントの構え。これがやや浮き、無情にも捕飛に終わってしまう。続く松本も「スピードガン以上に真っすぐが伸びていて、変化球も低めに集められていて打ちにくかった」と話した馬庭の好投に三振を喫した。

小田はバントの選択肢を選んだ
「15回まで絶対ゼロに抑える」そんな強い気持ちを持って鈴木は延長のマウンドに上がった。ランナーを背負う苦しい展開でも冷静さを失わない。「気迫で押す、攻めるピッチングが体現できた」と自ら語るように、まさにチームの士気を支える気迫の投球だった。

鈴木を迎え入れるベンチ
一方、打線もその背中に応えたいとバットを振る。11回には代打・星子天真(史3=大阪桐蔭)を投入し、流れを変えにいくも得点にはつながらない。しかし12回表、ついに均衡を破る一打が飛び出す。

代打の星子
12回表、途中出場の南野倫平(総3=龍谷大平安)が馬庭を打ち崩すタイムリーヒットを放ち、初谷、そして俊足の矢野丈太朗(法1=國學院久我山)が生還。青学大は一挙に2点を奪取した。試合は一気に勝利へ傾くかに思えた。

タイムリーを放った南野

本塁生還を果たした矢野
だが、簡単には勝たせてもらえないのが東都リーグだ。12回裏、鈴木の投じた低めのストレートを捉えられると、二人のランナーが一気に本塁を駆け抜け同点。再び試合は振り出しに戻り、13回へ突入する。
迎えた13回表。先頭の小田の内野ゴロでランナーが二三塁に進むと、打席に立ったのは4番・松本。「4年生が引っ張っていかないといけない」と強い覚悟を持って立った打席で、初球のストレートを一閃。鋭く弾き返した打球はライト前へ抜け、ついに勝ち越しに成功。さらに渡部にもヒットが生まれ、流れを完全に引き寄せる。

決勝タイムリーを放った松本

マルチ安打の渡部
そしてその裏、再びマウンドに上がった鈴木は全身全霊のピッチングでリードを守り切る。真っ向勝負のストレートで相手打者を力でねじ伏せ、最後は渾身の一球で打者を討ち取る。試合時間3時間26分、両校一歩も譲らぬシーソーゲームは青学大に軍配が上がった。自身最長となる6イニングを投げ切った鈴木は、最後まで気迫のこもった投球を貫いた。

鈴木は小さくガッツポーズし勝利を喜んだ

中西・渡部バッテリーにも笑顔が見られた
試合後、安藤寧則監督は「反省点はたくさんあるが、結果として勝てたのは大きい」と話した。さらに「ピッチャー陣はよく期待に応えてやってくれた」と力投を労った。苦しい場面でも声を掛け合い、繋いできた選手全員の総力が、価値ある1勝をもたらした。この勢いを明日につなげられるか。両校の意地と意地がぶつかる第2戦も目が離せない。
(記事=比留間詩桜、写真=田原夏野・比留間詩桜・山城瑛亮・高木一郎)
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