【硬式野球】苦難を経て掴み取ったドラフト1位の座~4年生インタビュー⑨ 佐々木泰~

硬式野球

史上5校目の大学四冠を成し遂げた青学大。その中心にいた4年生は、優勝に輝いた明治神宮野球大会をもって硬式野球部を引退しました。青山スポーツでは4年生9名にインタビューを行い、青学大硬式野球部で過ごした4年間を振り返っていただきました。最上級生としてチームを牽引してきた4年生の皆さんの熱い言葉を全9回に渡ってお届けします。最終回となる第9回の主人公は主将としてチームを牽引した佐々木泰(コ4=県岐阜商)選手です。


高校時代には甲子園で本塁打を放ち、大学では四冠を達成。そしてドラフト1位指名を受けプロの世界へ足を踏み入れる。佐々木が残してきた足跡は一見すると順風満帆そのものである。しかし、その影には苦難と葛藤の日々があった。

1年春、佐々木は鮮烈なデビューを果たした。デビュー戦から中軸に座ると、打率.371、4本塁打と大暴れ。見事ベストナインに輝いた。しかし、その後は戦国東都の荒波に揉まれ、この数字がシーズンキャリアハイとなった。

1年時の佐々木

佐々木はこの4年間を「1、2年の頃は日本一や四冠とかは考えられなかったので、出来過ぎな4年間だった」と振り返る一方、4年春が最も苦しかったとも語る。
主将に就任し迎えた4年春のリーグ戦。チームは開幕から8連勝と勝ち星を重ねるも、佐々木は不振に喘いでいた。佐々木はこの時のことを「チームが勝っている中で自分の成績が振るわなかったというところが一番しんどかったというか、気持ちをコントロールすることが本当に難しかった」と振り返る。
しかし、「自分の成績ばかり考えるとだんだん暗くなってしまうかなと思ったので、(主将として)チームのことを考えて今まで通り普通にやろう。やっていけばきっと自分の成績も上がっていくだろうと考えた」と気持ちを切り替えた佐々木は、シーズン最終戦を迎えた。
勝った方が優勝という優勝決定戦までもつれ込んだ最終戦。相手は中央大学であった。試合は3回まで0−1と中大がリード。劣勢の状態の中、4回表、二死一、三塁のチャンスで打席には佐々木。佐々木は3球目の変化球を捉えると打球は見事な放物線を描きレフトスタンドへ。ここぞの場面で佐々木に一発が飛び出し逆転に成功。そのまま逃げ切り青学大は3季連続のリーグ優勝を成し遂げた。佐々木はこの本塁打が4年間で最も印象に残っていると語る。

中大戦で本塁打を放った佐々木

喜びを分かち合う佐々木と佐藤尊将(総4=智辯学園)

その後、6月に行われた全日本大学野球選手権では打率.333、2本塁打、8打点の大活躍でMVPを受賞。9月からの秋季リーグ戦でも打率3割超えの活躍を見せ敢闘賞を受賞。完全に復調し、優勝に大きく貢献した。

全日本選手権でMVPを受賞し表彰された佐々木

しかしその佐々木に悲劇が訪れた。四冠を目指し迎えた明治神宮大会。初戦の福岡大戦の8回、佐々木は三塁線の打球に飛びついた際に左肩を痛めた。その試合はフル出場するも、その後の試合は欠場。ベンチから戦況を見守ることとなった。
そして迎えた決勝戦。青学大は創価大と対戦し7−3で勝利。見事四冠を成し遂げた。この時の佐々木の目には涙が浮かんでいた。佐々木はこの時を振り返り「最高に幸せだった。最後というところで寂しい思いもありましたし、やっと(四冠)達成できた安心感からの涙だったと思う」と語った。こうして、佐々木の学生野球人生は四冠という最高の形で幕を閉じた。

感極まる佐々木

優勝後には胴上げもされた

その佐々木はこの秋、広島東洋カープにドラフト1位指名された。1位指名された時は「もうびっくりが1番だった」と振り返る佐々木だったが、その眼差しの奥には既にプロ野球選手としての覚悟と責任感があった。「日本を代表する選手になって、将来的には2000本安打とかそういうタイトルが取れるようになりたい」と理想とする選手像を語る佐々木。背番号10が広島の空にアーチを描く未来は、もうまもなくだ。

 

(記事=山城瑛亮、写真=遠藤匠真・川﨑史緒・田原夏野・比留間詩桜・山城瑛亮)


◆番外編◆

記事には組み込めなかったエピソードを紹介!

ー青学大に入学した決め手は
「プロにドラフト1位で行きたいと思った時に、そこに向けて1番ベストなのはどこかというところで、やっぱり戦国東都かなと。青学っていうブランド力にも惹かれた。(同じ県岐阜商出身で1学年上の)松井さん(大輔・24年コ卒=現NTT西日本)からも「やりやすい大学で強いし、いい大学だと思うよ」と言われていたので、それも一つの決め手になった」

ー今年1年、主将としてどのようにチームをまとめたか
「一人一人が本当に自覚を持ってやってくれたので、自分は何かしたというよりも、キャプテンとして手を抜かないとか全力疾走とかあるべき姿というところを意識して、他はもうみんなが支えてくれたような1年間だった」

ー対戦して印象に残っている相手は
「西舘さん(中大、現読売ジャイアンツ)だったり細野さん(東洋大、現北海道日本ハムファイターズ)は本当に凄かった」

ー細野投手からは3年秋に先頭打者本塁打を放ったが
「本当にたまたまで、トータルで見たら敵わないような方なので、そのような方から打てたということは自信になる」

ー今秋にはセカンドでも出場したが
「オープン戦やノックでもセカンドで入っていたので、そこまで慌てふためいたりとかは無かったので、どっしり構えてできた」

ー四冠後のインタビューではリーグ10連覇を目指しているという発言があったが、普段からチーム内で言っていることなのか
「監督、コーチからそういうことを言われたりもしましたし、もちろん現実にできればいいと思うんですけど、どれだけ目標を達成しても満足しないという意味でそういう目標を立てさせてもらった。簡単に成し遂げられる甘いリーグではないので、軽い発言じゃないですけど、勝っても常に上へという意味でそういう発言をさせてもらった」

ー期待する後輩は
「投手では中西(聖輝、コ3=智辯和歌山)。野手は藤原(夏暉、法3=大阪桐蔭)。中西は本当に頑張ってくれて、中西のお陰で四冠達成できたんですけど、また自分の学年になったら背負うものが変わってくると思うんですけど、あいつならやってくれると思う。藤原はキャプテン初めてで色々大変だと思いますけど、凄い熱い男なので必ずいいキャプテンになると思う」

ーカープの印象は
「本当に応援も凄くて、守備力が高い印象が強い」

ー1年目の目標は
「まずは開幕1軍というところを目標にやって、最終的に新人王を狙えたらいいかなと思う」

ー佐々木選手にとって青学大野球部はどのような場所か
「家族です。監督、コーチも応援団も、青山スポーツさんも(笑)全部含めて家族」

ー後輩へのメッセージは
「四冠取った次の年というところで、やっぱり注目度も上がると思うんですけど、まだまだ上を目指して、青学らしくチャレンジャー精神を忘れることなく、2年連続四冠期待しています」


今回をもって全9回にわたってお伝えした4年生のインタビュー企画が終了となります。4年生の皆さん本当にお疲れ様でした。そして4年間取材へのご協力ありがとうございました。皆さんの今後の舞台でのご活躍を心からお祈りしております。

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