「下積み時代から、良いときも悪い時もずーっと(青学大陸上競技部を)みてきているので、どんな結果になっても、うちは変わらず応援していきたいですね。箱根で勝って、(選手たちには)一番良い姿で気持ちよくなってほしいという思いはもちろんありますけど」。そう話すのは、地中海料理コシード(以下、コシード)」の取締役社長、田中勲さん。コシードは選手たちが暮らす町田寮の近くにあり、地元の人々にも長年愛されているお店だ。毎日のようにやってくる選手たちの胃袋をボリューム満点のスペイン・地中海料理で満たす。
コシードと陸上競技部の付き合いはおよそ15年にのぼる。選手たちのSNSに度々登場するので、ファンの間では有名なお店だ。お気に入りのメニューは駅伝の襷のごとく、先輩から後輩にしっかりと受け継がれる。箱根駅伝3連覇(2~4年時)に貢献した一色恭志氏(17年営卒=現・GMOアスリーツ)が好んで注文したカルボナーラは代々後輩たちに受け継がれ、選手たちの定番メニューになっている。去年の主将、鈴木塁人氏(20年総卒=現・SGホールディングス)が好きな若鳥とポテトのガレシア風は、飯田貴之選手(総3)に受け継がれているという。
田中さんは、選手たちから「イサオさん」と呼ばれるように、陸上競技部のお兄さんでありお父さん的存在だ。「げんき~?」と軽く声を掛ける時もあれば、時には熱く「人生論」を語る時もある。選手の顔が浮かない時には、「いいときもあれば悪いときもある。自分がやったことは自分に返ってくるよ」。と励ます。特によく話す機会があるのは岩見秀哉選手(教4)。いつもニコニコしていて話しかけやすいオーラが出ているという。「人見知りしないし、一年生の時から一人で平気な顔して食べにくるっていうちょっと度胸がある子なんですよね」と息子のことを話すように、嬉しそうに語った。
卒業してからも、選手たちは彼女や婚約者を連れて、よく食べにくるという。結婚式でビデオメッセージを頼まれるほど深い関係になる選手もいた。コシードは、単に胃袋を満たすだけの場所ではなく、日々厳しい練習を積んでいる選手たちがほっと一息をつける憩いの場であった。そして、そこでいつも温かく選手を迎える「イサオさん」は、選手たちの精神的支柱になっている。
毎年、箱根駅伝は自宅のテレビで観戦している。「いつも見ている子達が走っているし、うちのごはんで少しは(からだが)できているんで、やっぱりドキドキしますね。」と田中さん。箱根駅伝後、選手たちのSNSがコシードでの祝勝会の写真で溢れることを祈りつつ、今年の箱根駅伝をステイホームで応援したい。
(記事=堀井香菜子)
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