【シリーズ】選手に問う、大学スポーツの現状 第5回アメリカンフットボール部芹澤主将 「アメフトをできる喜び」と「周りの方への感謝」

アメリカンフットボール
写真提供=アメリカンフットボール部

 新型コロナウイルスの影響で、大学生の部活・サークルも活動自粛となりました。青山スポーツでは、大変な状況の中で選手の本音に迫りたいと思い、インタビューを決行しました。第5回目はアメリカンフットボール部の芹澤励 (済4)主将。春季オープン戦の中止、活動自粛を受けての思いを伺いました。

―現在の活動状況は?

 6月の中旬ごろから、人数を分けて緑が丘グラウンドにてトレーニングを中心に練習をしています。

―活動自粛で今まで通りの練習ができなくなった時、どのような気持ちでしたか?

 3月ごろから練習の人数制限が始まり、正直先も見えないですし、本当にどうなってしまうのだろうっていうのが正直なところで。本当にこのまま引退っていうことも覚悟しましたし、もう引退かもね、と同期とも話していました。その中でも、自分がチームにいる限りはどうチームを前進させるかというのをとにかく考える日々でした。

―もう試合がないかもしれないという不安はありましたか?

 引退してしまうかもしれない、という気持ちと、でもこの4年生として、さらに主将として、手放すわけにも諦めるわけにもいかない、という気持ちとの中間で何とかやっていたというのが正直なところです。

―そのようなときに監督・コーチからの言葉は何かありましたか?

 コーチ体制が4月から一新して、ヘッドコーチの森さんの新たな戦術もいっぱい入ってきて、実際にプレーすることができない中でも、新たに入ってきた戦術の確認を行うことでモチベーションの面でもチームが前進することができたのではないかと思います。

―新たな戦術というのは具体的にはどのようなものですか?

まずチーム共通でいうと、プレーの基礎編と応用編があるとしたら、基礎編の質を向上させようというのが今年のチームの全体像で、ディフェンスについてだと、ディフェンスの弱みの部分だったランプレーに関する部分を補ってくださるような戦術を教えていただいたので、そこに関して注力しているという感じです。

オンライン取材に快く応じてくださった芹澤主将。

―オンラインで練習をする中で、他の部員とどのようなコミュニケーションがありましたか?

 ミーティングとかで決めてやってしまうと、本題というかその議題についてしか進まないというのがオンラインの特徴だと思うんですけど、ミーティングという形だけでなく、各学年でミーティングかつ雑談会みたいなものをやってみようよ、という新しいこととか、コーチの方からトークライブをやりますっていう提案をされて、雑談を目的にしたミーティングというのをやったりして何とかコミュニケーションをとっていました。

―コミュニケーションをとる難しさはありましたか?

どうしても最低限の必要なコミュニケーションだけになってしまうというのはあったので、それ以外の部分をどうしようっていうのはあったんですけど、ヘッドコーチの方が「とにかくチャレンジしてみよう。失敗してもいいから恥をかいてもいいからチャレンジしてみよう。」と言ってくださって、何でもやりやすくなったというのはあり、トークライブなどにもチャレンジできました。

―新しく学べたことはありましたか?

 意外とオンラインでもできるなというところがあって、例えば、どうしても授業の都合上、練習欠席者が出てくるのですが、グラウンドの練習が再開した後も、欠席者は別の時間でオンラインでトレーニングしよう、ということに応用できたりとか、トレーニングの管理というのが自分で動画を撮ったり自分で数値を報告したり、というように確立されてきたので、そこは今後もオンラインとオフラインの融合ということでやっていけると思っています。

―主将として大変だと感じたことはありますか?

 そうですね、一番気にしたのは4年生のモチベーションで、自分も含めてなんですけどやっぱり学生スポーツが4年間しかない中、このラストイヤーでこの状況、もう引退ということにつながりかねない状況で、まず4年生に気を使ったのですが、意外と4年生は立場的なことからも、こういう状況だけど最後までやるよ、っていう意思が見えていました。モチベーションが下がっていたとは思うんですけど、みんな表に出すことなくやってくれたので逆にそこは良い予想外というか、他の学年がモチベーションが下がっている中で、4年生がみんな各自やってくれたので、そこは助かったかなと思います。

―何か部員にメッセージを送ることはありましたか?

 そうですね、なぜ4年生がモチベーションをそこまで落とさずにいられたかというと、今年自分たちがどうプレーするか、どういう結果を残すか、というよりも、将来的に自分たちの行動がチームにどうつながっていくか、というところに目線を移せたので、それについてのメッセージを発信することで、今自分たちがメインではない3年生や2年生も感じるところがあったのではないかと思います。

―今回の自粛期間を経て、練習が再開する中、アメフトに対する意識は変わったのでしょうか?

 はい、本当に当たり前じゃないなというか、本当にありがたいことをできていたんだな、というのは思いましたし、去年のあの試合が最後だったのかなというのもずっと思っていたので、一度死んだ身というか、もう一度プレーできることに喜びを感じます。もう一つは周りの人への感謝があって、この活動再開に向けて顧問の先生や部長の先生であったりゼネラルマネージャーの方であったり、いろんな方の支えがあって活動できているので、本当に周りの方への感謝を感じています。

―どのような時に喜びを実感しましたか?

 最初はシンプルなトレーニングから始まり、今も実戦形式の練習はできていないですが、それに近い形でプレーの戦術の確認をできるようになってきていて、実際のアメフトに近い動きを行ったときに、自分の好きだったアメフトってこういうことだったな、というのを思い出しつつやっています。

―秋に公式戦が開催される見通しが立ったという発表を聞いたときはどう感じましたか?

 一度引退を覚悟していたので、どんな形でもリーグ戦があるというのはありがたいと感じていて、でもリーグ戦がある以上は、もともと目標であった1個上のトップ8昇格というのを絶対に目指さないといけないですし、試合ができるだけでいいや、ではなくて結果に対して向き合わなきゃな、というのはあります。

―引退も覚悟したということで、どのような時期にそう考えていましたか?

 4月、5月あたりですね、例えば高校生の夏の甲子園が中止になったり、周りのスポーツも中止になっていく中で、プロではないのでそこに経済効果もないですし、コンタクトスポーツなので危険度も高いですし、そういったところから果たして自分たちは出来るんだろうかという気持ちはありました。

―その時期を経て練習が再開し、ありがたさを感じているということでしょうか?

 そうですね、練習が始まってすぐのときはみんな実感していると思うのですが、これを忘れずに、今後自分がいなくなった後も練習を出来ているありがたみを忘れないでほしいなと思います。

写真提供=アメリカンフットボール部

―最後に、最終的な目標をお聞かせください。

 今年の目標はトップ8昇格で、今年は入れ替え戦がおそらくないのですが、どんな形であれ昇格という可能性はあるので、まずは昇格を目指して、昇格という仕組みが今年はなくなったとしても、一つでも上の順位を目指します。長期的なチームの目標で、将来的には日本一という目標があるので、そこに向けて少しでも良い位置で来年以降につなげられればと思っています。

―昨シーズンの悔しさを生かしたいという思いはありますか?

 そうですね、もちろん悔しさもありつつも、接戦で負けた試合もあり、そこに対してはもっと出来たなというか、もう少し自分たちが工夫していればもっと上のレベルで戦えるな、という自信も感じているので、去年ぎりぎりで落としてしまった試合というのを今年は確実に取れるように頑張っていきます。

(聞き手=山本路葉)

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