東都大学野球 春季1部リーグ 対国学院大 第1回戦 5月22日 於・明治神宮野球場
◆結果◆
青学大 000 010 000|1
国学院大 000 000 000|0
◆出場選手◆
1 二 藤原夏暉 大阪桐蔭
2 遊 山口翔梧 龍谷大平安
3 一 小田康一郎 中京
4 捕 渡部海 智辯和歌山
5 三 初谷健心 関東第一
6 指 中山凱 専大松戸 → 星子天真 大阪桐蔭
7 中 中田達也 星稜
8 左右 大神浩郎 福岡大大濠
9 右 青山達史 智辯和歌山 → 左 南野倫平 龍谷大平安
P 中西聖輝 智辯和歌山
前カードの亜大戦では初戦を落とし、まさに背水の陣で挑んだ青学大。そこからの2連勝で勝ち点をもぎ取り、再び勢いを取り戻した。そしていよいよ、勝ち点を取ればリーグ5連覇が決まる運命の一戦、國學院大學との決戦が神宮球場で幕を開けた。
先発のマウンドに上がったのは、青学大が誇る絶対的エース・中西聖輝(コ4=智辯和歌山)。「とにかくチーム全員で、僕の右腕で絶対優勝をもぎ取る」そんな強い思いを胸に、今日も気迫のこもった投球をみせた。立ち上がり、国学院大の先頭打者・中西にフェンス際の長打を浴び、無死三塁のピンチを迎える。しかし、ここで崩れないのがエースの証だ。その後は冷静さを取り戻し、後続を断ち無失点で切り抜けた。

中西はチームのために今日も腕を振った
3回裏には、智辯和歌山高時代のチームメイト・宮坂との対戦が実現した。宮坂が放った鋭い打球は、初谷健心(総4=関東第一)のファインプレーで見事打ち取った。中西は笑みを浮かべながら、初谷を労った。

渡部の配球も中西の好投に繋がっている
打線は国学院大先発・藤本のチェンジアップに苦しみ、得点の糸口を見つけられない時間が続いた。そんな中、4回表。主砲・渡部海(コ3=智辯和歌山)のヒットで出塁すると、初谷もヒットを放ち、続いて一死一、二塁とチャンスを演出。だが、中山凱(史1=専大松戸)が併殺に倒れ、無得点に終わった。

ヒットを放った渡部

初谷も攻守にわたって活躍をみせた
均衡を破ったのは5回表。中田達也(社4=星稜)がヒットで出塁し、大神浩郎(総1=福岡大大濠)が確実に送りバントを決めると、二死二塁の場面で打席にはキャプテン・藤原夏暉(法4=大阪桐蔭)が立った。今季はエラーも重なり、苦しい時間が続いていた藤原。それでも「背中で魅せる」という今季強く掲げている信念を胸に、カットボールを捉えた打球はライト前へ落ちる先制のタイムリーヒットとなった。「たまたま落ちてくれた」と控えめに振り返ったが、その一打がどれほど重い意味を持つか、誰よりも本人が知っているはずだ。

貴重なタイムリーを放った藤原
中西はその後も安定した投球を続けた。時折走者を許す場面もあったが、緩急を巧みに使い分け、要所を締める。9回にはこの日最速となる150キロを計測。春先に課題だったスタミナも、今はもはや不安要素ではない。

試合終盤に150キロを計測
中西は138球被安打3の好投で完封勝利をあげた。リーグトップに立つ6勝目を挙げた右腕は、試合後に「もうちょっと点取ってほしい」と冗談を交えながらも、満足げな表情を見せた。

試合後笑みを浮かべる中西
試合後、安藤寧則監督も「本当にうれしい勝ち方。エースが抑えて、キャプテンが打ってという」と喜びを口にした。ただし、こうも続けた。「あと1勝が難しいのが東都」。その言葉の裏には、あの時の悔しさが刻まれている。

試合後取材に応じる安藤監督、藤原、中西(左から)
2022年10月19日。勝てばリーグ優勝が決まるという駒大との一戦で、あと1アウトまで迫りながらサヨナラ負けを喫し、16年ぶりの優勝を逃した。藤原ら4年生にとって、その記憶は今も色濃く残る。「僕らが1年生の時は、あと1アウトで優勝を取り切れなかったという思い出がある。そこの難しさを誰よりも知っている世代だと思うので、それをうまくチーム全体に伝えながら、結果的に優勝できれば」と藤原は語る。
あの日の涙があったからこそ、今日の勝利がある。背負ってきたものを力に変え、あと1勝に全てを懸ける青学大ナイン。明日、神宮の空に笑顔の花が咲く瞬間を、目に焼きつけたい。
(記事=比留間詩桜、写真=田原夏野・比留間詩桜・山城瑛亮・高木一郎)
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